「節食ランチ」

毎年10月16日を「国連食糧農業機関(FAO)」が「世界食料デー」として制定している。日本国際飢餓対策機構(JIFH)の説明によれば、 この趣旨は、「世界の一人一人が協力しあい、最も重要な基本的人権である『世界の人々に食料を』を現実のものとし、世界に広がる栄養不良、飢餓、極度の貧困を解決してゆくこと」にある。そして、世界食料デーの願いが、「この日をきっかけとして、自分自身の生活を見つめ直し、少しでも世界の人々と共に生きる生き方を実践しようとする人が増やされていく」ことだという。飽食の日本とは裏腹に、世界の飢餓は確実に広がっている。1分間に17人(うち12人は子ども)、1日に2万5千人、1年間では約1,000万人が飢えのために生命を失っている。一方、食料の不足のない日本でも、孤独と疎外の中で、餓死する人がいることも事実だ。「こころとからだの飢餓」の広がりは足元にも及んでいる。

本学では、この「世界食料デー」を全学で受けとめて、その趣旨に少しでも近づく努力を行おうと、全寮制を活かして「節食ランチ」を企画した。ここしばらく途切れていたが、再び私たちの「食のあり方」を見つめる機会としたい。通常のランチはかなり豪華である。ご飯などの主食に魚や肉などの主菜、そしてサラダバー的な野菜や芋などの副菜、そしてヨーグルトや牛乳などの乳製品、そしてりんごなどの果物と、かなり食事バランスの摂れた昼食といえる。さらに、希望者には「納豆」やフリカケなどもある。ところが、本日の節食ランチでは、ご飯と味噌汁、それに漬物のみであった。できるだけ一口一口噛み締めるようにして食事をしてみた。食事を頂くことのできることの感謝と改めて日頃の昼食の豊かさを実感する。

節食ランチの企画中に、フィリピンで牧師をしている卒業生から支援の要請メールが本学に届いた。先週マニラを直撃した台風による大洪水の中で、被害を受けた500世帯の家族に教会として支援したいが、助けてくれないかという趣旨のものであった。教会もその教会員も被害を受けているが、教会が地域の人々のためにできることを一生懸命行おうとしている。それに私たちも参加し協力できることは「恵み」である。彼ら1家族の救援物資は250ペソ(480円)だそうだ。これで、米3キロ、サーディンの缶詰4つ、インスタント麺5袋、コーヒー50グラム、赤砂糖0.5キロが配布できるようだ。私たちの1食分で1家族が幾日か支えられる。さっそく、この1両日にカンパする機会を得た。世界の必要ある人々と共に生きる機会は、意外と私たちの近くにあることに気づく。「世界食料デー」は、善い隣り人となって共に生きる生き方へと私たちを促す日でもある。「あなたの手に善を行う力があるとき、求める者に、それを拒むな。」(箴言3:27)