「顔と顔を合わせた絆」

8月29日(月)から始まった秋学期も早くも2週間が過ぎる。まだまだ暑さは続くが、確実に秋の気配がキャンパスに漂っている。桜の葉が落ちてキャンパス内の道路に積もってきた。確実に色づき始め落葉の季節である。夏休み中、学生たちは様々な所に出かけたが、夏期伝道も、海外語学研修も、異文化実習も、東北ボランティアチームも、無事にそれぞれの学びと働きをなし終えて戻ることができた。また、2012年度の開設に向けた牧師養成のための大学院設置認可申請業務も教職員のチームワークで順調に進んだことも感謝である。7月のブログでも書いたとおり、この秋学期には、新しく6名のアジア神学コース(Acts-es)の学生が、インドとジンバブエ、日本から入学した。さらに、短期留学生が米国から10名加わり、キャンパスは急に活気づいている。

今夏、私は「東京基督教大学『明日の世界宣教者育成』支援会」(TCU支援会)の紹介と働きを各地区で、主に本学卒業生を中心に起こしていただくために、福岡、広島、高松、大阪、名古屋、新潟と訪れる機会を得た。特に、千葉キャンパスで学んだ卒業生たちとの再会は、格別に楽しいものであり、彼らの近況と課題に触れて、より身近に彼らを改めて知る時となった。千葉キャンパスを巣立った卒業生は、この20年で大学と神学校併せて800名以上となる。彼らとの再会はまた、本学の歩みを卒業生たちに分かち合い、彼らの時代とのつながりや展開をよく理解してもらう時となる。神学部の中で、牧師養成のみでなく、グローバル社会で人々をつなき、平和と和解に貢献する国際人の養成や、高齢社会となりつつある日本で、キリストの隣人愛と奉仕の精神をもった介護福祉士の養成の必要などを率直に分かち合う中で、本学が目指そうとしているところを懇切丁寧に分かち合うことができる。これもまた学長の大切な仕事の一つなのだと改めて感じた。

それぞれの地域で協力者を得て、支援会の働きが起こされつつあるが、やはり、時間をかけて「顔と顔を合わせた」議論と相互理解がとても大切であることを今さらながらに思う。電子メール、フェイスブック、ツィッター等の発達はすばらしいものであるが、それでもなお、実際に出会って、相互に意見を交換し、表情と仕草からその人の思いを読み取ってゆくことが「絆を深める」大切なプロセスなのだと。これは伝道や牧会の働きにはもちろん、ビジネスの世界でも、家族や隣人との関わりにおいても然りである。短期留学生が一人、一人と学長室を訪ねてくる。それは彼らの日本語授業の一環で、自己紹介を日本語でする練習相手として学長が選ばれたからである。しかし、この出会いは私にとって彼らを知るすばらしい機会となっている。米国同時多発テロから10年、東日本大震災から半年、信念や信仰、ことばや民族、環境や状況、性別や年代等の違いを覚えつつ、「顔と顔を合わせた」出会いと相互理解こそ、「壊れ、破れる」事柄の復旧、復興、修復の大きな力となることを改めて覚えたい。

「今、私たちは鏡にぼんやり映るものを見ていますが、その時には顔と顔とを合わせて見ることになります。今、私は一部分しか知りませんが、その時には、私が完全に知られているのと同じように、私も完全に知ることになります。」(1コリント13:12)