「教会と福祉」(2)

稲垣久和です
11月2日「教会と福祉」の続きとしてお読み下さい。
スウエーデンのルター派国民教会にはdeacon(執事職)が置かれている。以下は、それとは対照的に、自由教会に属するキリスト教事業経営者のケース・スタデイーです。
マルメ郊外のHyllie Parkに行き、バプテスト教会(260人会衆規模)経営の施設でのマネジャーへインタビューした。
Hyllie Parkは1993年スタートの施設で、その際には1教会が閉鎖するなど多難な中で出発し、しかし今では保育園・幼児園から成人(更正)学校、高齢者ホームの経営を株式会社方式で順調に運営している。教会運営と分けたことが成功の原因らしい。経営責任者Anna Bergmarkは15年間ここに勤めているとのことで60人スタッフ(うち40人がフルタイム)の3億円規模のマネジメントをやっている有能で敬虔な女性。3年ごとに競争入札があり、他業者と競り勝って市よりの委託を受けている。
教会の持ち株が100%の事業であるが、教会はBusinessには一切口を出さないとのことで、経営は市の補助金がかなりあって利益も計上しているにもかかわらず、教会は利益配当を放棄している。その分をBusinessに注いでいける。スタッフ全員がキリスト者ではないが(スエーデンの法律では差別になるから)、キリスト教信仰のハートを持って利用者に接することの出来る雰囲気に苦労しているとのこと(スタッフの80%がキリスト者)。
ホームは約40人のシングル高齢者(平均年齢86歳)が一部屋ずつ住む住居で、広々とした1万坪ほどの芝生の中に3つの建物があり、保育施設から子供たちの声も聞こえるという良い環境である。部屋はキッチンつきで食堂での食事も可能(見学当日にとんがり帽子をかぶってザリガニパーテイーをやっていた)。重病の利用者は入れないので、医療知識を持ったスタッフよりもむしろ愛をもって接するスタッフを集めているという印象がある(全員女性)。
自由教会の社会的責任で運営しているので、制度化された伝統的教会論的なDeacon制度とは異なって実践的なヒューマンな場所で、それが社会民主主義勢力の強いマルメ市当局からも信頼を得ている理由であり、利用者を推薦して(措置して?)送ってくる。何十人も待ち人がいる評判の良い施設であるコメント

・北欧モデルは過去の強固な国教会とそれへの反発が強く、反発は自由教会と社民党の結成に表れた。これはオランダ・モデルにはまったくない要素である。
日本の教会の場合は国民教会の背景がなくすべて自由教会なので、Hyllie Park方式による福祉社会参加の方がモデルとしては、プラクテイカルで体質に合っている。deacon方式は国教会の背景がないと形式だけ入れても機能しない。東京基督教大学共立研究所発行のEmergence」vol.XI.no.3(2007年)には日本の4つの自由教会の事例研究が掲載されている。
・TCU福祉専攻はこれらの福祉先進国の事例を参考にしつつ、日本で唯一、将来のクリスチャン・ケアワーカーの指導的人材を生み出せる体系的な教育の場である、そのように自負しています。共にここで学びましょう!