「守られて」

卒業証書が48名の一人一人に授与され、祝辞が始まってしばらくすると、本学のチャペルが揺れ始めて、その勢いが時間とともに増し、もはや気配を窺う状況ではなくなった。500名近くの人々が一斉に屋外に移動し、広い中庭に出て難を逃れた。幸いに一人のけが人もなく、また、協力し合って一つ場所に移動できたことに胸をなでおろす思いであった。日ごろ危機対策を念頭に訓練をしてきたところであるが、実際起きてみると気持ちの動揺と戦い、しかもできるだけ迅速に安全を確保し、人々を誘導するという責任を思う。幸い、余震も収まった機会を見て、帰れる人々には帰宅を促し、公共交通機関によって来られた人々への対応へと移ることができた。30名あまりの人々が、今晩、本学の寮に宿泊するように手配した。多くの方々の協力に感謝である。

卒業式で皆がチャペルに集まっており、人々の点呼が取りやすかったこと、卒業証書も卒業生皆にすでに授与した後であったこと、そのチャペルが頑丈で大きな被害から守られたこと、本学の中庭が意外と広く、そこに避難できたことなどが幸いした。マグニチュード8.8という巨大地震に見舞われた東北・三陸沖に近い人々の被害状況が明らかになるにつれ、その被災の甚大さを思わずにはいられない。心痛む限りである。被災された方々の上に「主イエスの賜る平安」を祈るのみである。また、被災者への迅速な救援活動を願わずにはいられない。