「壊れ、失われる」

梅雨が明けたと思ったら、昨年と同じような猛暑が続く。梅雨は梅雨で被災地の人々には辛く、さらに、梅雨が明けてこの猛暑に復旧や復興への気勢も削がれることだろう。本当にお気の毒である。東日本大震災から四ヶ月。今も避難の中におられる人がおよそ11万人いる中、仮説住宅で一人で亡くなられた方のニュースが報じられた。互いに気遣うネットワークをと願う。人と人との「つながりが壊れ」、いつしか「忘れられた」人々がいる。このような人々にどのように手を指し伸ばすことができるのだろうか。本学は7月9日から夏休みを迎えた。早速、恒例の「夏期伝道」が南は九州・佐世保、北は東北・岩手へと9チームが派遣されている。その中の2チームが被災地にある教会へ、ボランティアを兼ねての派遣となった。

前日の7月8日には、夏期卒業式が執り行われ、5名が巣立っていった。5名とも9月入学の留学生である。クラス2011のこの5名(女2、男3)は、ケニア、インド、ジンバブエ、カメルーン、ネパールと出身国が違い、それぞれの特徴とともに、持ち味を出したクラスという印象がある。陽気な者、少し斜に構えクールな者、賛美し出したら踊り出す者、彼らの中を取り持つ人、絶えず冷静に品のある人という具合だ。いつも卒業式の前に、卒業生を自宅に招いて夕食会を持つが、日本という異文化での学びや生活からの気づきや失敗談に花を咲かせ、本当に楽しいときでもある。しかし、彼らもまた、母国のみならず、この日本において「関係が壊れ、孤立し、忘れられた人々」に視線を向けるようになり、その人々への関心を深めている。

この9月には新たに6名の留学生がアジアとアフリカから加わる。また、秋学期だけの交換留学生が米国から10名ほど本学に来て、寮で皆と生活する。彼らの目にはどのように今の日本が映るのであろうか。この夏休み、日本の学生も海外へと出向く。フィリピンへ2チームが異文化実習として本日旅立ち、1ヶ月間、貧しい人々の地域で現地NGOの活動に参加する。さらに、海外語学研修のチームが米国シアトルで7月13日から40日間、ホームステイをしながらシアトル・パシフィック大学で英語研修を行う。フィリピンと米国とでは国事情、地域事情は異なるが、飢えの中でも、飽くことの中でも、同じ人間がもつ関係破綻の痛みと忘れ去られていく孤独に呻く、私たち人間の現実をしっかりと見、また、少なからず共有してきてほしいものである。

「人の子は、失われた人を捜して救うために来たのです。」(ルカ19:10)