「助け合い」

2008年も残り1ヶ月となった。12月となれば巷では「歳末助け合い募金」で赤い羽根が目につく。また、救世軍の「社会鍋」は有名である。発祥は米国サンフランシスコで1894年だそうだ。「社会鍋」は、「クリスマス・ケトル」の日本語訳である。不況に喘ぐ失業者の救済活動と言われ、日本では1909年山室軍平らによって始まったと聞く。これも100年の伝統となっていることに改めて敬意を表したい。いみじくも、キリスト教暦では、今週からキリストのご降誕を祝い、その来臨を待ち望むクリスマス・アドベント(待降節)となった。

今年は9月の米国金融証券大手のリーマン・ブラザーズの経営破綻以来、世界経済恐慌が米国のサブプライムローン問題と相まって世界中を駆け巡り、日本も株安円高傾向が続き企業の経営悪化を招いている。企業のリストラや就職内定者の取り消しと、じわじわと私たちの身の回りにその影響が出始めている。米国の市場経済主義の中で、格差社会が一段と加速し、その歪みが若者の就労状況に反映されている。小林多喜二の「蟹工船」が最近もう一度読まれ出したと聞くが、長時間労働を強いられる貧しい労働者だけでなく、職さえも奪われようとしている若者に共感を得ているのかもしれない。

今日の社会は、「不安と怒り」に覆われている。経済的不況による将来に対する不安、様々な格差がもたらす人格的、経済的疎外による怒りが増し加わっているようだ。老若男女とも「孤独感」を深め、どうしようもない呻きが「怒り」となって爆発するのだろうか。衝動的行動による殺人や強盗、幼児虐待や家庭内暴力などの犯罪の急増が、社会をまさに暗くしている。この1ヶ月、クリスマス・アドベント期間、町々家々を飾りつくすクリスマスのイルミネーションを「心をともす灯」としたいものである。「自分のことだけではなく、他の人のことも顧みなさい。あなたがたの間では、そのような心構えでいなさい。それはキリスト・イエスのうちにも見られるものです。」(ピリピ2:4-5)