「メサイア・コンサート」

年末の日本ではベートーヴェンの「第九」がよく演奏されるが、もう一つよく演奏されるものがある。それは、ヘンデルのオラトリオ『メサイア(救世主)』である。今年はヘンデル没後250年に当たる。ドイツ生まれだがイギリスに帰化した。『メサイア』の内容は、イエス・キリストの誕生、受難と復活、永遠のいのちと主キリストの即位で、英語で歌われる。中でも「ハレルヤ・コーラス」は圧巻である。三部からなり、その第一部が「メサイア預言とその成就」で、クリスマス・シーズンと合致することもあり、この時期に演奏されるようになったのかもしれない。最近では、You Tubeでも「さわり」を聴けるようになり、より身近となっている。2009年のクリスマスはヘンデルの『メサイア』を聴く年としても意義深いだろう。

先週、幸いなことに「メサイア・コンサート」を二回も聴く機会を得た。一回は12月16日(火)に池袋の東京芸術劇場で「ヘンデル没後250年記念メサイア」で、本学も後援として名を連ねた。ソリストや楽団併せて40名、合唱団は130名、プロ・アマ混成で全曲三時間の演奏を満喫した。私たち夫婦は前席の恩恵に与り、ソリストの歌声と牧師である指揮者の表情が直に伝わり、その臨場感はひとしおであった。もう一回は12月19日(金)に本学のチャペルで開催された恒例の「メサイア・コンサート」である。ソリストや楽団併せて20名、合唱団は40名と前のものと比べると小振りだが、すべてクリスチャンによって演奏され、歌詞が日本語で歌われること、本学卒業生もソリストや合唱団に加わっていることなど、毎年その味わいを深めている。

本学コンサート開催日の昼のチャペルでは、旧約聖書を専門とする教員が、『メサイア』の第一部「メサイア預言とその成就」を丁寧にヘンデルの旧約聖書の引用をもとに、コンピューターを駆使してソリスト独唱のBGMとともに解説してくれた。彼は、ヘンデルがどれほどメサイア預言を思い、その成就であるキリスト誕生を待ち望み、その成就としてのクリスマスを喜び、それを賛美として譜面に書き表したのかを、彼なりの解釈で語ってくれた。夜のコンサートへのよき備えにもなった。『メサイア』は、ヘンデルの一作品であるが、イエス・キリストのご生涯とその意味を、音楽家として作曲と演奏を通して、人々に伝えるとともに、彼自身の信仰告白でもあると思わされた。ヘンデルは『メサイア』を「追いやられた人々、困っている人々、病める人々のため」の慈善演奏会としたことも知られている。メサイア(救世主)とは、まさにそのような方であるからだ。「あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。これがあなたがたのためのしるしです。」(ルカ2:12)