5年目の春に想う

例年の学園教職員退修会があり、2012年度がスタートしました。キリスト教福祉学専攻も5年目に入り、開花し始めた学園のみごとな桜並木が楽しみな季節です。3月に卒業した福祉専攻の学生は、専攻の初穂として4年間よくがんばり、りっぱに卒業されました。彼らの活躍を祈ると共に卒業後のフォローと励ましとして、彼らの福祉の現場を今年度訪れたいと願い、卒業生との新たなネットワークを創る年の始まりであるとも感謝しています。

2008年に開学する時にも、介護福祉士養成教育の制度が大きく変わりましたが、完成年度を迎えた2011年も福祉の制度は大きく変更がありました。それを受けて2012年度からのカリキュラムにも痰の吸引等の医療行為の一部を介護福祉士が担えるように医療的ケアの授業が導入されています。

医療的ケアの導入については、教育現場からは「生活支援の専門家を養成してきたのに、医療のもとに引きずられるのは問題がある」という意見もありました。ソーシャルワークを専門とする自分もその点は共感する部分がありますが、介護の現場では医療との連携や医療知識はますます必要とされていますので、ここは積極的に医療的知識や技術もさらなるスキルアップとして位置付けなくてはと思います。

同時に、厚労省の養成カリキュラムにはほとんどありませんが、経営や人材育成のマネジメントの知識やスキルも現場でリーダーとなる4年制大学養成介護福祉士に求められています(幸い、こうした関連の授業が福祉専攻にはすでにあります)。先日、千葉県いや国レベルでもリーダーシップを発揮する印西市内のある施設長さんと面談しましたが、制度的な混乱の中でいかに介護スタッフも経営のマネジメントや人材育成のスキルを磨くことが重要かを熱っぽく2時間も語って下さいました。

丸12年を経過した介護保険制度も、この春の制度改定でますます複雑になり、経営的ノウハウがないとサバイバルできない厳しい時代です。教会で小規模ながらの介護事業にも携わる身としてもそのことはひしひしと感じています。介護現場の実態や複雑な制度改正の一端と向き合い、常にその苦悩や現状から学びつつ、またそれを教育や卒業生のフォロー、そして地域社会の貢献にも結びつけていきたいと願わされる新年度です。(井上貴詞)