台湾の熱い風

井上貴詞です。

地震・津波と放射能汚染の三重苦にあえぐ福島へ久しぶりの救援ボランティアに参加しました。今回は、避難所でなく、仮設住宅に住む人々への炊き出しでした。炊き出しといっても、緊急的に食事を提供する段階よりも心のケアがいっそう大切な時期です。交わりをとおして被災者の方々への傾聴やコミュニティづくりを応援するということに重点がありました。一緒に野菜を切ったり、話をしながら肩たたきやマッサージをしたり、シオン祭にも来られたクリスチャンシンガーの横山大輔さんの歌を聞いたり、子どもたちと遊んだりとこころのふれあい、時間と空間と共にする楽しいひと時でした。

仮設住宅の周辺には、一般の住宅があり、私が気仙沼や石巻で見たような津波で根こそぎ建物や人が流されたような悲惨な光景や異様な匂いはありませんでしたが、ここに住む人々は、津波で家が流されたり、放射能汚染で家に住めなくなった方々です。心の奥底には、深い傷や苦悩、喪失感があり、狭くて十分な設備のない仮設暮らしは大きなストレスです。80世帯位の集落になっていましたが、高齢者世帯も多く、炊き出しをした集会所に来られないからだの不自由な方のために、食事を届けたりもしました。

救援の拠点になっているT教会は、放射能も恐れず、人々のからだとこころと魂のケアのために救援活動を続けています。驚くべきは、世界中から救援物資が集まり、世界中からボランティアが集まっていることです。福音の持つ普遍性、国際性、包括性が見事に表され、いきいきと輝いている教会です。今回は、自費で渡航した台湾の教会の救援チームとT教会のミッションに合流させていただいたのですが、共に生きようとする姿勢が、国境や文化を越えて、痛みを分かち合うあたたかな交わりや励ましとなっていることを肌で感じておおいに励まされました。自殺者まで出ていると報道される仮設住宅の現実に、これからも私たちは祈りと関心と行動を向けていくことも改めて知らされました。

何といっても今回感動を覚えたのは、自費で渡航し、日本に一週間滞在されて救援ボランティアをされた台湾の教会の方々の姿です。彼らの祈りと献身は、ことばが通じなくても、人々の心を励まし、動かし、短期間であったのに、信仰を告白される方まで起こされたのです。救援チームというよりも、宣教チームでした。

圧巻の神様のみわざのドラマは、最後に用意されていました。台湾チームは、炊き出しが終われば、その場からバスで帰途につく予定でした。ところが、T教会救援隊のある男性が「台湾の皆さんが帰る前に洗礼を受けたい」と急きょ希望され、T教会牧師は即断。予定変更で台湾の皆さんをマイクロバスに乗せてT教会に戻り、そこで洗礼式が行われたのです。その男性は、腎臓がないため透析治療を16年も受けており、透析では20年しか生きられないと告げられていました。しかし、台湾チームの熱い祈りと奉仕をみて、イエス・キリストにある救いを受け入れ、後何年生きられるかわからなくても、すべてを平安の内に委ねて主に従う弟子になりたいと決心されたのです!

そして、受洗後すぐに聖餐式。台湾の皆さんとの聖餐式にも感動!それから(これも予定になかった)賛美集会が始まり、その場は神様の臨在にあふれました。その晩、教会の役員会まであった私は、帰りのバスの運転もして、肉体的にはへとへとでしたが、霊的には喜びがあふれました。閉塞感と危機感を覚える日本と日本の教会に台湾教会チームは、熱い聖霊の風を呼び込んだのです。また、それは宣教とは、国境文化を越え、人々の肉体やこころ、暮らしの支援(すなわち福祉)を含む包括的な救いを伝える(分かち合う)ものであることの立証でもありました。

TCUの国際キリスト教福祉学科という名称は、まさしくこの時代にふさわしい名称であり、必要な学科であることを改めて実感しています。TCU福祉専攻は、介護福祉士養成のコースですが、単に高齢者、障がい者の介護というだけでなく、地域の人々と共に生き、コミュニティを創る幅広い福祉人材養成をめざしているのです。(井上貴詞)