「少人数人格教育」

本学は定員160名の小規模大学である。また、全寮制で同じキャンパスに住居があり、男子寮・女子寮のみならず家族寮もあり、一つのコミュニティを形成している。家族寮の子どもたちも住居ゾーンの中で生活をし、留学生の子どもたちと一緒になって遊ぶ環境がある。樹木や草花に囲まれた空間は、子どもたちにとっても安全で辺りを探索できる場所ともなっている。2009年度は、例年に比べ新入生が多く与えられた。といっても49名ほどである。学生同士でも教職員との関係であっても、互いの名前と顔とが重なるのもそう遠くはなく、そこでは、「ひとりひとり」が覚えられてゆく。

少人数ということもあり、学生課は新入生がどのような思いをもって本学を志望して入学したのかを教職員や在校生の前で発表する機会を設けた。新入生一人一人がどのように本学を知りどのように本学を選んだのかを聞くことができるのも少人数ならではのことである。その発表では、その人の人となりや家族との関わり、これまでの挫折や痛み、そしてキリストを知る機会と葛藤、そして、将来への希望などが分かち合われた。このような分かち合いがより一層、互いを近く感じさせる。今日、コミュニケーション能力が問われる中で、人格的な交流を養う必要が叫ばれているが、まずは相手の話を聞き、相手を知るところから始まるということであろう。

学生と学生との距離も、学生と教職員との距離も非常に近いというのは少人数の良さでもあるが、同時に互いが近くなればなるほど相手の欠点も見えてくる。性格の違い、考え方や見方の違いの中で、相手を受け止めきれない自分もそこに見出す。特に、寮生活は「近い」がゆえに軋轢が生じるところでもある。自分一人で誰からも干渉されずに生きたいと人は思うが、しかし、「ともに生きる」社会の形成にとっては、自分とは違う他者とどのように生きるかが問われる。その意味で、寮生活は違う者同士がどうしても向き合う環境におかれるという点で、人格が練られる機会となろう。とともに、一人たたずむ空間をどのように確保し、自分自身を見失わないようにするかもまた試されるところである。「鉄は鉄によってとがれ、人はその友によってとがれる。」(箴言27:17)