「主に向かって、心から歌う」

宗教と音楽は切っても切れない関係にある。キリスト教会では、「神に賛美する」ことが礼拝の主要な部分でもある。特に、プロテスタント教会では会衆が「声を一つ」にして主に向って歌うことを大切にしてきた。かつて旧約のイスラエルがエジプトで奴隷の中から神の大いなる御力によって救い出されたとき、自分たちの救いを喜ぶことよりも、その救いを一方的に成し遂げられた「主なる神」をほめたたえた。同じように、罪の奴隷であった私たち人間を、その「十字架と復活」によって罪の赦しを成し遂げられた救い主イエスを、信じた群れ(教会)は「ほめたたえる」。宗教改革は、賛美を礼拝者一人一人の口に取り戻した「歌声運動」であったとも言われている。

2月13日(金)は、私自身にとって特別な日となった。その日の昼のチャペルでは、アフリカからの留学生が私たちの賛美を導いてくれた。その賛美の歌詞は、「イエスの愛」や「救いのすばらしさ」という単純な内容であったが、その曲調の新鮮さと楽しさに圧倒された。そこには「アフリカのリズム」が主の救いを喜び賛美することにとてもマッチしているように思えたからである。歌声が呼応するように響きあい、会衆賛美をより高く天へと引き上げるように感じた。彼らは手や足などからだ全体を「一つの楽器」のようにして、声をあげている。彼らの感性の豊かさに本当に驚かされた。

夜には、「2008年度卒業記念コンサート」が開かれた。これは年一回、本学で声楽レッスンや器楽レッスンに励んできた卒業予定者がその成果を披露するものである。日本のプロテスタント教会音楽は、ドイツを中心とした欧米的なものを受け継いでいる。その音楽的緻密さと完成度の高さは他を凌いでいる。その理性的な曲想は、安定感と永続性を生み出すものとなっているのだろうか。緊張気味の学生たちの精一杯の歌唱や演奏に会場は励ましの拍手に満ちていた。欧米の整然とした宗教音楽とアフリカのダイナミックで自由な賛美と、その両面を堪能する一日であった。「詩と賛美と霊の歌とをもって、互いに語り、主に向かって、心から歌い、また、賛美しなさい。」(エペソ5:19)