「リーダーの育成」

7月後半、韓国に行く機会を得た。本学と韓国総神大学校の社会教育院(生涯教育部門)とで、日韓宣教協力学術セミナーが2006年以来毎年開催され、今回本学からは私と岡村直樹准教授が発題を行った。「教育とリーダーの育成」がテーマで、特に、次世代の教育とリーダーの育成について、キリスト教会という文脈で議論した。韓国はキリスト教人口が総人口の25%を占める国であり、教会に通うクリスチャンが多いが、教会の次世代リーダーの育成が課題としてある。日本のクリスチャンは人口の1%以下であるが、教会の高齢化は顕著で、次世代の教会やクリスチャンリーダーの育成は急務でもある。それぞれの国のキリスト教事情と求められるリーダーの育成は異なるが、リーダーの育成そのものは共通の課題である。

もう一つの隣国である中国は今年「北京オリンピック」開催で政治的・経済的に活気づいているが、もう一つ活気づいているものがキリスト教だと言われている。中国政府に登録している三自愛教会にも未登録の「家の教会」にも多くの人々が通っているということである。急激な経済成長による都市と田舎の経済格差や都市化の歪み中で人々の心が渇いているのだろうか。そのような中で、三自愛教会も家の教会も、やはり、リーダーの育成が求められていると聞く。いつの時代でも、どのような組織や機関でも、リーダーの育成は怠ってはならない課題であり、また、その働きを次世代へとバトンを渡す者をしっかりと育てなければならない。その育成には、単に知識やテクニックの伝達だけではなく、人格を通して受け継がれるスピリットと情熱が伴わねばならない。

新約聖書にバルナバ(慰めの子))というキリストの弟子がいる。バルナバは、かつて教会の迫害者でありクリスチャンとなったパウロをキリスト教会に橋渡しし、パウロを励ましてその賜物と才能を宣教と教育の働きに引き出した。キリストを地中海世界に広めたパウロの働きは実に大きいが、このリーダーを育成したのがバルナバである。バルナバは、パウロと意見を異にし衝突したときもあったが、絶えず、パウロとともに時間と働きを共有しながら、彼の良きものを引き出した人物である。そのパウロもまた、テモテやテトスという次世代のリーダーを身近に置きながら育成している。リーダーの育成は学校の教室の中だけではできない。学校教育に携わる者にとって肝に銘じておくべきことである。「多くの証人の前で私から聞いたことを、他の人にも教えの力のある忠実な人たちにゆだねなさい。」(2テモテ2:2)