TCU教員が新入生にすすめる本 NO.1

シリーズ「TCU教員が新入生にすすめる本」 1

図書館では、良書との出会いを願って、先生方のアンケートをもとにシリーズ「TCU教員が新入生に薦める本」を企画しました。この読書案内が皆さんにとって、これからの読書プランの一助になれば幸いです。

井上貴詞先生のおすすめ(担当授業:「介護サービス論」「社会福祉学」ほか)

① 私の読書から

・『イエスの御名で』ヘンリー・ナーウエン著,あめんどう社、1993年

ナーウエンの著作は、『いま、ここに生きる』などが在学中のあるクラスで取り上げられるが、これはそれよりもさらに頁数が薄いので、最初に読んでみる本としてはお薦め。TCUは、分野を問わずキリスト教界のリーダーを養成する教育機関であるが、「聖書的リーダーシップとは何か」を教えてくれる。今や「霊性の神学」と言われる分野の先駆けとも言え、実践的であり、今読んでも深く心を探られる本である。

・『子どもをいきればおとなになる-<インナーアダルト>の育てかた』クラウディア・ブラック著,アスク・ヒューマン・ケア、2003年

アダルト・チルドレンという言葉を聞いたことのある人は多いだろう。従来は、虐待やアルコール依存症の家庭など機能不全家族で育ち、トラウマ(心的外傷)を引きずったパーソナリティを持つ人を指していたが、現在は程度の差こそあれ多くの人が、その根底に「アダルト・チルドレン」と共通するパーソナリティ特性を有している。自らを振り返り、見つめなおすために有益だったと読んだ学生からも評価があった本。子どもや隣人を理解するためにも役立つ。著者は、アメリカのソーシャルワーカーであり、社会心理学者であり、アダルト・チャイルド(AC)の概念の生みの親。牧師をめざす人にも福祉をめざす人にも一読のお薦めの書。もちろん、すべて受け入れるのでなく、読んだ後もキリスト教世界観のメガネで批判的吟味もして欲しい。

②これだけは読んでおこう

・『ケープタウン決意表明』日本ローザンヌ委員会訳, いのちのことば社、2012年

神学部単科のTCUであるのに、そのひとつの学部の中に、なぜ神学や国際、福祉があるのか。他の神学校ではありないし、他の神学大学では、別の学部学科になる。そのユニークさへの素直な驚きと疑問に応えてくれる本である。ホリスティックな宣教と福音理解の入門書としても最適。

 

 

・『プレステップ基礎ゼミ』川廷宗之ほか,弘文堂、2011年

・『改訂福祉系学生のためのレポート&卒論の書き方』川村匡由・川村岳人, 中央法規、2005年
春学期に基礎演習というゼミがあるが、時間の不足を感じることがある。授業でのディスカッションやプレゼンテーション、レポート書き方、大学生活の送り方などの参考に最初にこうした本を読んでおくとゼミでの理解が深まるし、後々も助けとなる。この他にも、図書館には『大学生活ナビ』『よくわかる学びの技法』『広げる知の世界』など,大学での学びや生活の指針となる本があるので、この手の本はぜひ一冊は読んで欲しい。こうした本を読んで「4年後にはこうした卒論に取り組もう」と想いを温めておくことは大学生活での学びのモチベーションになる。ちなみに、上記の「レポートの書き方」の本は、「福祉系学生~」とあるが、専攻は問わず活用できる。

③ 私の著書(論文)から

・「社会福祉基礎構造改革の理念と今日の社会福祉への継承」キリストと世界、21号, 2011年
いわゆる大学の紀要である。どの専攻でもTCUでは「社会福祉学」などの授業単位を取り、「社会福祉主事」という任用資格が取得できる。難しそうに思えるのは当然だが、福祉に関心のある方は、この程度の専門用語が出てくる文体には、チャレンジして概観を掴んでなじんで欲しい。

・『これからの福祉と教会』稲垣久和編著,いのちのことば社、2012年


福祉専攻の専任教員が全員で執筆している。TCUで学ぶ福祉の基本コンセプトが示されている。読みやすい本なので、まずは読んでみて、掘り下げたいところや疑問点は、授業でどんどん各先生に質問して欲しい。福祉専攻に限らず、全員に読んで欲しい本である。