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第3回 A-2研究会「医療・看護とスピリチュアリティ、そして日本的“思いやり”倫理」

2015.06.06|アイビー・ホール

 

発題: 森村 修|哲学、倫理学/法政大学 国際文化学部 教授
小西達也|スピリチュアリティ論、スピリチュアルケア論/武蔵野大学 看護学部 教授

 

森村修氏は、ケアの側面から本研究会のテーマにアプローチしてくださいました。森村氏はケアを、「ケアする人もケアされる人もケアという関わりの実践を通じて、互いに少しでも〈幸福〉になることが目ざされている実際的な行為」と定義し、以下のように語られました。

ケアの倫理は、「倫理学」のような学的体系性を備えたものではなく臨床知である。ケアは動的関わりであり、その人の傍らに物理的に居るだけでなくスピリチュアル(魂的)に居ることである。この場合、魂とはその人を失ったときに始めて分かるような「その人としての掛け替えのなさ」を指している。人が誰かをケアするのは「私たちの生の奥底にある魂がその人の魂と触れ合うため」である。ケアの意味は私たちの傷つきやすさを支援しエンパワーすることで)ある。ケアとは私たちの生の全体と深く結びついている。

また小西達也氏は、相良亨を参考にしつつ「『日本的宗教性』に基づいた日本的スピリチュアルケア試論」について語ってくださいました。

スピリチュアル・クライシスに陥ったときに、当人のビリーフ再構築のプロセスにおいて「より深いリアリティへの目覚め」がさらに深まると、その個人の内面に「はたらき」が現れる。「はたらき」とは何か? それは「おのずから」なる“生成”であり、日本人の意識の古層に流れてきた日本語でいう「自然」(じねん)に類似している。古事記に出てくる「産霊の霊力」であり、①万物生成のはたらき(宇宙を通じたはたらき)。②現実にいかに対処すべきかを個人の内面に生成するはたらき。それらは人格的超越者ではない。この「日本的宗教性」に基づいたスピリチュアルケアとは、ケア対象者が「おのずから」「はたらき」に目覚める生き方を見出すサポート。押し付けではなく、対象者の生育暦等の様々なテーマについての語りの中で、サポート提供者は「理解=自己表現のサポート」を提供していき、その中で「現実をどう捉えるか」「自分が何を望んでいるか」といった事柄を明確化していく。

「はたらき」を公共世界の中で客観的に証明することは困難ですが、現世界観を修正して世界4のリアリティを承認することなどが考えられます。(稲垣久和)

 

稲垣久和・導入

小西達也氏・パワーポイント資料