tci-img-bar140

第1回 A-2 医療看護とスピリチュアリティそして日本的“思いやり”倫理

2014.06.14|ホテル東京ガーデンパレス 桂の間

 

発題:
小西達也|スピリチュアリティ論、スピリチュアルケア論/武蔵野大学教授
伊藤高章| 臨床スピリチュアルケア、キリスト教史、臨床教育/上智大学教授

 

[概要報告]
小西達也氏は、スピリチュアルケアの定義の多義性の中から次のような定義を導入します。「離婚、失業、老病死などの人生の危機(spiritual crisis)に直面している人を対象とし、傾聴やカウンセリングの形を通じてその人の内面生活をサポートしていく行為」。また、伊藤高章氏はスピリチュアリテイを、「諸個人が意味や目的を求め表現すること、その瞬間・自己・他者・自然・特別に意義深いもの・聖なるものとの繋がりを経験する人間の側面」という国際合意で導入します。日本では医療者側から始まったスピリチュアルケアは、本来、医療と宗教の統合ですが、そのための理論はまだ形成されていません。

スピリチュアルケアの現場では、患者さんの多様な宗教を考慮して、病院チャプレンでもインターフエース、つまり多元的な対応が求められますが、小西氏のアプローチは、なによりもその「ビリーフ」(価値観や世界観などの広義の信念)概念の導入に特徴があります。ビリーフ再構築とは、あらゆる囚われの価値観からの解放を意味し、「真の自己」(神/仏性、スピリチュアリテイの働き)への目覚めを意味します。そしてこれをサポートすることがスピリチュアルケアであり、そこではケア提供者の訓練もかなり重要な要素となります。したがってスピリチュアルペインを取り除くという、「痛みを取る」医療的な発想とは異なっています。伊藤氏の場合も医学的な科学の手法とは異なり、ケアを診断型(dia-gnostic)と対話型(dia-logic)に区別します。診断型は当事者より援助者のほうが客観的知識をもっていますが、対話型は当事者の主観の開示によって初めてケアの内容が見えてきます。者は統計的方法と具体的一般的思考、後者は共感的方法と具体的個別的思考を重視し、語りの承認としてのスピリチュアルケア職を目ざします。

私自身は、スピリチュアルケアがメンタルケアと分かちがたく結びついていることを踏まえつつ、「死への恐怖」に面と向き合うケア提供者の側の臨床哲学を強調しています。そこではハイデガー的な世界内存在の志向性ではなく、世界内超越にもとづく自己論と、スピリチュアルな意味に特有な対話型の自己-他者関係が必要と考えています。 (稲垣久和)

 

A-2 研究会 開催趣旨(PDF)
小西達也氏 レジュメ (PDF)
伊藤高章氏 レジュメ (PDF)
後日、全体の記録をアップします。