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第5回A-1研究会「脳神経科学とポジティブ心理学」

日時:5月14日(土)13:30-18:00 |会場: 東京ガーデンパレス・桂の間

発題:
浅野孝雄氏|脳神経外科学/埼玉医科大学 名誉教授
「心と脳の関係について」

小林正弥氏|政治哲学・公共哲学/千葉大学 法政経学部 教授
「ポジティブ福祉哲学の公共的ビジョン」

 

今回が最終となる「脳神経科学とポジティブ心理学」では、最初に浅野孝雄氏が「フリーマン理論と唯識理論」のこれまでの研究のまとめをお話しくださり、その内容をめぐって質疑応答が行われました。私(稲垣)からは次の3点の質問とコメントを出しました。第一点は、エックルズ-ポパーの「世界3」がリアルであるという議論は、リアル(実在する)の定義から言って単に「記憶貯蔵」という捉え方より広いのであり、そこから「世界4」もリアルであるという発想が出てくるということ。第二点は、それと関係しつつ「情報とは意味の伝達である」という言い方の中にすでに科学言語(情報)から日常言語(意味)への創発は含まれていて、これは存在論的創発と捉えるべきであろうということ。つまり「世界3」は「世界2」「世界1」に還元できないのだということ。第三点は、浅野氏の著書でブッダの考えは「実在論的ではない」とあるが、しかし明らかにカント的な観念論ではないので、浅野氏自身の捕らえ方は唯心論でもないし、やはり批判的実在論に近いと言わざるを得ないということ。前半ではこれらをめぐっての討論が行われました。

後半の小林正弥氏のポジティブ心理学についての発題は、主観的な幸福指数を個人レベルから社会的レベルに適用する試みです。社会における幸福概念を功利主義ではないかたちでどのように確立していくのか? スピリチュアルな意味が社会的なレベルでどのように働くのかは今後も大きな課題となっていくことでしょう。 (稲垣久和)

 

 浅野孝雄氏・資料