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第3回 B-1 研究会 市民ボランティア、地域ガバナンス、公共政策

日時:7月4日(土)13:30-18:00|会場: IVY HALL 3階・オオゾラ

発題:
福島慎太郎氏|地域社会学、社会心理学、社会調査論/青山学院大学 総合文化政策学部 助教
松葉ひろ美氏|福祉思想/千葉大学大学院 人文社会科学研究科 広井研究室

 

福島慎太郎氏は「共同福祉と公共福祉の狭間」と題し、社会調査からの実証的アプローチを報告してくださいました。

その社会調査は京都府の中丹地域における全農村地域を対象に行われたもので、「特定の共同体を超えた市民一般との関係」への信頼と、「共同体内部の具体的な相手との関係」への信頼について調査したものです。また「私は幸せである(私的福祉)」と「町内の人々は幸せである(共同福祉)」とに分けて、近畿・中国・四国地方の計412地域のコミュニティも調査されました。そこでは、「信頼」「互酬性の規範」「ネットワーク」の3つの要素と、「結合型(共同的な関係)」「橋渡し型(公共的な関係)」の2つの類型をもつソーシャル・キャピタルついて、個人単位と集団単位に分けて検証を行いました。
その結果、個人単位のソーシャル・キャピタルは、上記の全要素・類型において本人の幸福度を正に予測(つまり、幸福に対する個人の資源として機能)していたのに対して、集団単位のソーシャル・キャピタルは効果をもたないことが明らかになりました。他方、集団単位に形成された共同的なソーシャル・キャピタルが豊かな地域では社会プロセスによる共同福祉の成立が促進されていました。
結論として、私的福祉と共同福祉はトレードオフの関係にあることが明らかになったと言います。

また松葉ひろ美氏は、「福祉思想」をテーマに語ってくださいました。
渋沢栄一の『論語と算盤』にみられる忠恕の思想、内務官僚の田子一民の福祉の制度化、留岡幸助の北海道を背景にした「家庭学校」における自然に親しむ青少年教育の意味を紹介され、これからの福祉思想では「生命思想」が重要であると指摘します。そうしたなか、二宮尊徳の報徳・生命思想にも注目します。周知のように、その思想は戦前の社会教化のなかで戦後には否定的に受け止められる使われ方をしたのですが、“本来の報徳思想”に見られる「推譲という譲り合いの精神」は「本来人間と自然との関わり、道徳と経済という関わり」のなかで、今日の日本に生かしていけると、松葉氏は語られました。 (稲垣久和)

 

稲垣久和・イントロダクション

福島慎太郎氏・レジュメ

松葉ひろ美氏・レジュメ