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第4回 B-1 研究会 市民ボランティア、地域ガバナンス、公共政策

日時:10月24日(土)13:30-18:00|会場:TKPガーデンシティ御茶ノ水 カンファレンスルーム2B

発題:広井良典氏|公共政策、科学哲学/千葉大学 法政経学部 教授
篠田 徹氏|政治学、労働政治/早稲田大学 社会科学総合学術院 教授

 

発題➀の広井良典氏は、今日の福祉の基本的枠組となる3点について以下のように語られました。

[1]「緑の福祉国家/持続可能な福祉社会」の展望は、「富の総量」に関わる環境が持続可能性をもち、「富の分配」に関わる福祉が公平性をもち、「富の生産」に関わる経済が効率的であるような社会であり、日本・米国よりも、ドイツ・オランダ・北欧・スイスで達成されている。
[2] 日本では近世まで、講に代表される「相互扶助の経済」が存在していたが、急速な都市化で失われた。福祉思想に関して言えば、戦前の国家神道的一元化で形骸化し、戦後の経済成長一辺倒で空洞化してしまった。それらを今後どのように再構築するかにかかっている。
[3] 現代は一方で、「幸福」「存在欲求」などのような福祉をめぐる高次の欲求が広まりつつある一方、格差・貧困などにより脅かされるという二極化が生じている。この二つの欲求は社会貢献や他者へのケアなどで接続しうるのではないか。

続いて発題➁の篠田徹氏は、「賀川豊彦を今どう語るか」と題して賀川が開拓的に推進した協同組合運動(労働組合、農業協同組合、消費者協同組合等々)について、現在は個々に活動しているこれらの組織が相互につながることで生まれる可能性を語りました。英国産業革命期のロバート・オウエン(1171-1858)は、マルクス・エンゲルスから「ユートピア社会主義者」と揶揄されますが、彼の社会改革の柱は協同組合運動であり、今日のイギリス労働党に連なる英国社会主義の父と呼べる人物です。このオウエンに匹敵する人物が日本では賀川豊彦であり、賀川豊彦献身100周年(2009年)と翌年の国連の国際協同組合年にちなんだ一連の事業を通して、それまで疎遠であった労働運動、協同組合運動が再び近づきつつあります。「これから日本は以前に増して、繋がり支え合って生きねばならない状況がすべての人々の生活の隅々に出てくる。NPOと協力しながら、労働運動と協同組合運動がどこまで連帯社会の再建に貢献できるか。いま日本のオウエナイト(オウエンの 社 会 改 革 構 想 に 共 鳴 する 人 々)の力がためされる」と、篠田氏は語られました。(稲垣久和)

 

稲垣久和・前回までのまとめ
広井良典氏・レジュメ
広井良典氏・パワーポイント スライド
篠田徹氏・レジュメ