キリスト教と政治研究会

座長 加藤喜之

 

[開催主旨]

冷戦後急速なグローバリズムで弱体化した市民社会は、各地で強力なリーダーシップを求めるポピュリズムを生みました。そうしたポピュリズムは、国権の強化と排外的なナショナリズムを求めます。その結果、「安全」という名目のもとに「自由」や「平等」といった近代民主主義の理想は退けられ、「立憲主義」や「人権」といったこれまで自明であった概念が脇に追いやられるようになっていて、本邦も例外ではありません。このような状況において日本のキリスト教会は政治についてどのように考え、応答していくべきなのでしょうか。

政治との関係において、これまでの日本の教会にはふたつの異なる方向性がありました。ひとつは、抗議やデモを通して直接的な行動をするものです。もうひとつは、福音を救霊に限定し、政治行動についてはそれぞれの裁量に任せるというものです。現代において両者の立場は対立しており、議論不可能な隘路に迷い込んだといってもよいでしょう。しかし、そのような対立は、神学的な議論を深めるよい機会でもあります。まさにそこに政治的な対立があるからこそ、その背後にある神学的な原理を浮き彫りにし、その正誤を明らかにする必要が生まれるからです。

本研究会は、近代政治とキリスト教の関係を歴史・神学的に検証し、現代的な問題への提言を目的とします。そうするにあたって三つの軸が考えられるでしょう。ひとつは、宗教改革以降のプロテスタント教会の政治との関わり方です。宗教改革の伝統は近代民主主義の理念とかならずしも調和的であったわけではありません。自由、平等、寛容の精神は、19世紀以降の自由主義的なキリスト教が重んじてきたものではあれ、反リベラルな立場をとる諸教会は神学的な考察を深めてきませんでした。とりわけアメリカのファンダメンタリズムや戦後の福音主義の流れをくむ諸教会は、政治から退き、二元論的な福音理解を提唱してきました。そうした教会のなかに、排外主義や極端なナショナリズムが広まりつつあります。二つ目は、教会の政治参加に積極的な立場です。なるほど主流派やカトリック教会は、戦後日本における教会の政治参加を牽引してきたといってよいでしょう。しかし、それは現代においてひとつの運動と化し、神学的な批判や新しい世代に説得力をもつ神学的な主張を提示できていません。三つ目は、キリスト教世界観や神の国といった東京基督教大学が重んじてきた概念群です。これら三つの軸を近年の聖書学や歴史研究の成果をふまえてもう一度神学的に検討し、現代日本の状況に適した神学を紡ぎ出していかなければなりません。

本研究会では2ヶ月に一度程度の定例会を開き、聖書神学、歴史神学、組織神学、政治神学、宣教学、実践神学の異なる視点から本対象について議論を深めていきます。研究所所員の発表に加えて、学外の研究者との交流も促進します。そのような議論を重ねることで、福音派にかぎらず、現代日本のキリスト教会が今後どのように政治を考え、参加し、批判すべきかの指針を提供していきます。

 

[メンバー]

加藤喜之|思想史     篠原基章|宣教学    ショート ランドル|旧約聖書学
森田哲也|国際関係論   山口希生|新約聖書学  山口陽一|日本キリスト教史

 

[過去の研究会]

第1回 2017年5月8日・金曜日
発題:宗教改革と政治 加藤喜之

第2回 2017年6月23日・金曜日
発題:組織神学と日本の政治 福嶋揚 |青山学院大学非常勤講師

第3回 2017年9月22日・金曜日
発題:戦中・戦後の日本のキリスト教と愛国心 芦名定道 |京都大学文学研究科教授

 

[今後の予定]

第4回 2017年11月24日・金曜日
新約聖書と政治(仮題) 発題:山口希生|当研究所研究員

第5回 2018年1月19日(金)
衰退する近代プロテスタンティズム :『現世利益』批判の隘路 踊共二|武蔵大学人文学部教授

第6回 予定
旧約聖書と政治(仮題) ショート ランドル