福祉の信仰者列伝(1)

稲垣久和です。昨年まで使っていたTCU福祉学専攻の学生募集パンフレット、現役学生の「ココが違う!」というアピールがありましたね。その下に、なにやら古めかしい、時代を感じさせるセピア色の顔写真が載っていました。4人の顔写真、いずれもが明治、大正、昭和期の近代日本の福祉を築いた代表的な人物です。留岡幸助、石井十次、山室軍平、賀川豊彦でした。彼ら以外にもたくさんのクリスチャンが福祉分野で活躍していて、それらの人々を代表してとりあえずはこの4人の顔をお借りしました。
いま私の手元に『人物でつづる 近代社会事業の歩み』(全国社会福祉協議会、1971年)という本があります。金原明善(1832年、天保3年生まれ)という人物からはじまり、糸賀一雄(1914-1968年、大正3年生まれ)で終わり、合計26名がセレクトされている本です。なんとそのうちの半数13名がクリスチャンです。期せずしてこうなったのでしょうが、いまだに総人口1%にも満たない日本のクリスチャンが、いかに近代日本の福祉分野でリーダーシップを発揮したか、このような先輩諸兄姉の生き方に深く学びたいと思いました。
時代の順序で連載していくのが筋でしょうが、今日は第1回目として、まずは私たちの時代に近いところで、献身100周年記念行事を2年前に終えた賀川豊彦(1888-1960年)のことを記しておきましょう。彼は1927年(昭和2年)に書いた「基督教社会主義論」と題した論文の中で、こんなことを言っています。
「イエスは神の国が常に進歩的のものであり、また成長的なものであることを教えた。彼はそれを種から芽が発生し、芽から茎が、茎から穂が、穂から実が出来るような、或る順序だった成長のあるものとして考えた(マルコ4:26-27参照)。即ちイエスは、飽くまでも、道徳的内部改造を基礎にした社会運動を考えたのであって、そうすることによって超越的な神の力がそこに加わるものであることを信じたのであった」。

kagawa toyohiko

賀川豊彦(提供:賀川豊彦記念・松沢資料館)

続く