中村健之介編訳『ニコライの日記』岩波文庫となる

中村健之介編訳の『ニコライの日記~ロシア宣教師が生きた明治日本』上中下、岩波文庫が完結した。中村健之介先生・悦子先生からいただいた3巻本を、まずは拾い読みしてみた。2007年に教文館から全9巻で出版された『宣教師ニコライの全日記』から、特に面白く、歴史的、宗教史的にも重要な記事を厳選してあり、まさに『全日記』のエッセンスであり、しかも読み易い。『全日記』は99,750円もするので、一般の読者にとっては大きな図書館で借りるしかなかったが、これで読者は爆発的に増えるだろう。何しろ面白い。
中村健之介氏が、関東大震災で焼失したと思われていたニコライの日記を、レニングラード(サンクト・ペテルブルグ)のソ連邦国立中央歴史文書館で発見したのが1979年のことである。中村氏はこれを解読し1994年にロシア語版で日記抄を出版。中村喜和、安井亮平、長縄光男氏の協力を得て2000年には北海道大学図書刊行会から『宣教師ニコライの日記抄』が出版された。私は、2004年に現職となって千葉県キリスト教史研究会を始めてから、克明な注を付した中村氏の「宣教師ニコライ下総巡回日記」(『千葉県史研究』7号、1999年)を驚きもって読んだ。2006年には中村氏をお招きして「ロシア正教と下総の正教徒」という講演をしていただき、『千葉県キリスト教史研究』1号に掲載した。
東京基督教大学の近辺(手賀、大森、木下、草深、多々羅田、船尾、松崎)巡回の日記は、岩波文庫では中巻の冒頭である。北海道から九州まで全国を巡っているので、誰もが身近な地域の記述にふれることができるのではないだろうか。