「関係を楽しむ」

謹賀新年。昨年暮れから年始にかけて渡米し、久しぶりのゆっくりとした休暇をいただいた。張り詰めていた気持ちをほぐし、気分転換を図った。日本から離れ、娘夫婦が住む南カルフォルニアと恩師が住むシアトルで時を過ごした。日頃、身を置いている現場を離れ、まったく別の空間に自らを置くこと、また、日頃、将来を見据えた計画やその遂行に携わることとは逆に、これまでの出会いをかみ締め、その関係を楽しむことができた。真夏を思わせるロサンゼルスの陽気と寒風吹き荒れるシアトルの天候に両極端を経験し、人生の行路をふと振り返る機会ともなった。昨年は「絆」が色々な意味で注目されたが、これまで培われてきた「絆を深めること」の中で、慰めと励ましをいただく恵みに与った。

「目的志向」型の人間である自分にとって、この年末と年始は「関係」の素晴らしさと大切さを思い起こす日々となった。それが家族であったり、友人であったり、先輩や恩師であったりするわけだが、そのような「関係」が、人に「潤い」を与え、心身の疲れに「憩い」を与えてくれる。そのような関係を持つことこそ、人を人たらしめることなのだろう。ある目標に向かって、ともに労する仲間がいる。ともに乗り越える。ともに泣き、ともに痛み、ともに担って、成し遂げる。目的を完遂するとともに、そこで関係が深められれば幸いだ。働きは一時的だが、関係は長く続くものでありたい。そんな関係を保つことこそ、人を健やかにさせるものなのだろう。

東日本大震災から10ヶ月。復旧や復興という大目標の中で、心身ともに疲れが溜まるときでもある。苦難の日々の中で、被災者や避難者の方々にあっては、新たな出会いや思いもよらぬ道が開かれて、勇気と力を得る経験をされた人も多いのではないだろうか。帰国早々、夕張市が中東カタール国の支援を受けて、岩手、宮城、福島三県の子どもたちと家族700人を「北海道夕張、親子で雪ん子冬のリフレッシュ・キャンプ」に招待したというニュースに触れた。まさに、日頃の苦しい現場を一時離れて、新たな出会いと親子との関係を楽しみ、夕張の人々との触れ合いを通して、渇く現実に「潤い」を、張り詰めた気持ちに「憩い」を与えるものであったに違いない。そのような関係づくりの中で、苦難と厳しい現実に意欲的に向き合う力を湧き上がらせてほしいものである。

「父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛しました。わたしの愛の中にとどまりなさい。」(イエス・キリスト、ヨハネ15:9)