「後を受け継ぐ者」

 去る7月5日に夏期卒業式を挙行して留学生5名を世に送り出した。2001年から始まった9月入学の「アジア神学コース(ACTS-ESプログラム)」も9回の卒業式を数える。本国で牧師や教師として働いている者、日本国内外で修士や博士課程で学びを継続している者、ビジネスの世界で活躍している者と多様で、今後がさらに楽しみである。この9月には新たに6名の留学生が後続の学生として入ってくる。少人数だが、TCU卒業生として、「キリストがすべて」のもと、自分を活かし、隣人を活かし、社会を活かす人物として活躍してほしい。教員も前回紹介したように、若手の篠原基章先生(国際キリスト教福祉学科所属、宣教学)と加藤善之先生(神学科所属、神学)が加わり、将来のTCUを担う教員として期待している。近年定年を迎えられた先生方のバトンを受け継いだことになる。

 後継者の育成はどこの機関にとっても重要課題である。殊に、小規模大学であり、さらに教職員すべてが福音的なキリスト者であることを「建学の精神」に則って自らのアイデンティティとしている本学ではなおさらである。「学生がいなくては学校として成り立たない」が、その学生を魅了するのはその教育環境であり、その中でも特に教員の質と教育内容が最も問われる。本学では教員の専門における学問的卓越性や教育力はもちろんのこと、キリスト者としての深い霊性、忠実な教会生活、誠実で協調する姿勢などが求められる。本学がその教育の使命を継続的に果たしてゆくためには、本学の建学の精神と信仰規準に同意する人物が国内外からたえず起こされる必要があるとともに、そのような人物を育成してゆく責任も負わされている。

 本学は戦前・戦後からの前身校をその歴史に持つが、大学としては1990年創立の若い大学である。その第一世代が私たちのような第二世代を育成し、第二世代の全盛期という時期を幸いに迎えているが、その間に次を見据えた第三世代への布陣とその育成に意を用いて行かねばならない。50代の「専任」の理事長を今年度から得て、さらに30代の二人の専任の教員(内一人が本学の卒業生)が加わり、2013年度は第三世代に向かう本学の新たな転換期とも位置づけられよう。本学は、教会の牧師後継者養成校でもあり、また、次世代の教会と社会に貢献するキリスト者の育成を教育の目標としていることもあって、教会とともに「後継者の育成」ということに真摯に向き合わねばならないのである。

 「多くの証人の前で私から聞いたことを、他の人にも教える力のある忠実な人たちにゆだねなさい。」(2テモテ2:2)