「世界に広がるネットワーク」

公共的な側面を持つ大学には、その地域貢献や社会貢献のみならず、世界大のネットワーキングが拓けるという利点がある。中でも、キリスト教系の大学のネットワークは世界大に広がる。キリスト教がもつ世界性は、このネットワークを遺憾なく機能させている。昨年の東日本大震災の緊急支援も、行政や民間の支援団体だけでなく、キリスト教の隣人愛と奉仕の精神に基づいて活動するNGOやNPOからの物的・人的支援が国内外からあり、被災地の教会や団体等を通して活動がなされたが、それもキリスト教の世界大のネットワーク力に負うところが大きい。日頃から世界に広がるキリスト教大学との交流や教員たちの世界大的な人脈のゆえに、小規模校の本学もそのネットワークはかなりの広がりを持っている。

去る7月6日に夏期卒業式を挙行し、10名(主に留学生)を送り出した。2001年から本学は秋季入学者を受け入れ、英語による神学教育を行っている。8回目の今年は、南米のペルー、アジアのフィリピン、アフリカのカメルーン、ケニヤ、ジンバブエからの留学生で、彼らを通してのネットワークがこれから期待できる。夏休みとなったが、本学の世界大のネットワークと人的広がりの中で異文化実習ではフィリピンにキリスト教NGOとの協力で、海外語学研修では米国シアトルのキリスト教大学との提携で、また、将来牧師を志す学生の教会インターンでは国内外の教会との協力関係で、学生たちが派遣されている。毎年恒例の学生主催の「夏期伝道」も北は東北、南は九州の10教会に7月7日から派遣され、10日間の働きを終えて帰寮した。これも国内外のキリスト教のネットワークの賜物である。

6月下旬から7月初旬にかけて、東日本大震災や原発事故の課題を神学的に検証し、また、今後の具体的な支援やケアを果たすために、本学に国内外から研究者や実践者が来られてセミナーやシンポジウムがもたれた。6月18日(月)には「東日本大震災と教会のミニストリー」セミナーに仙台を拠点として大震災からの復興に実際に取り組んでいる仙台キリスト教連合東北ヘルプ事務局長の川上直哉氏を、7月4日(水)には大震災や原発に関する日韓神学シンポジウムに韓国総神大学校の宋浚仁氏ら4名を、また、7月10日(火)には米国のキリスト教大学であるホイートン大学の心理学者ダビデ・ボアン氏ら5名を迎えて、精神的なケアを必要としている方々を取り扱う人々への支援について協議する機会を得た。痛みと苦しみの経験の中で、日頃あまり気にも留めなかったキリスト教の世界大的なネットワークの広がりの大きさを改めて覚えさせられている昨今である。

「キリストによって、からだ全体は、一つ一つの部分がその力量にふさわしく働く力により、また、備えられたあらゆる結び目によって、しっかりと組み合わされ、結び合わされ、成長して、愛のうちに建てられるのです。」(エペソ4:16)