「ホーリスティック」

 暖かだった3月中旬、キャンパスの桜がいっせいに開花し、春の陽気を身近に感じたのもつかの間、一転して寒さが戻り、雨が降り注ぐ3月下旬からの今日、桜花も散り始めてはいるものの必死で枝にしがみついている姿が実にいじらしい。明後日の入学式までもしや花をつけているのではないかと期待を膨らませている。今年に入って矢継ぎ早に身内に不幸があり、また、友人・知人の訃報に悲しみと痛みを経験しつつ、キリスト教暦の受難週を迎えてキリストの十字架に思いをめぐらし、その死からの復活に「生けるのぞみ」を噛みしめて復活節を過ごしている。その中での「初孫の誕生」は、神の慰めと労いとなり、人の生と死に関わる神のご主権とその厳かさを改めて実感させられる。

 2013年度が始まった。今年の新入生は編入生や大学院生まで含めて62名である。学部から大学院修士課程2年までの学生がすべて揃い、学部生142名、大学院・専攻科生34名の総勢176名で新年度をスタートする。また、今年度から若手教員が2名専任として加わり、学生や教職員に新しい風をもたらしてくれるだろう。本学の特徴は、50を数える教団・教派(外国も含める)出身の学生と、10ヶ国から40名(約1/4)の留学生を受け入れ、学びと寮生活を共有しているところにある。それぞれの教団・教派の特徴を踏まえてキリストにある一体性を確認し、また、異文化からのキリスト者との出会いを通して文化の違いを受けとめながら互いを知る機会とする。キリストにあっては一つだが、実に多様な人々がともに学び、ともに暮らす、それが本学の強みである。

 2013年度の本学の年間聖句は、「それから、イエスは、すべての町や村を巡って、会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをいやされた。」(マタイ9:35)で、年間テーマは、「主イエスの包括的な働きに倣う」である。廣瀬薫理事長が今年度から「専任」となり、この聖句とテーマを選ばれた。本学には「聖書に基づくキリスト教世界観をもって神の国建設に貢献する働き人を教会と社会に送り出す」使命があるが、今年度の聖句とテーマには、この使命をもう一度確認して、それぞれの教会が祝福され、日本とアジアと世界の宣教が前進するようにとの祈りが込められている。本学の、御国の福音を宣べ伝える牧師養成(神学)、世界をつなぐ国際人養成(国際キリスト教学)、人の必要に寄り添う福祉士養成(キリスト教福祉学)が、「主イエスの包括的(ホーリスティック)な働きに倣う」人材養成でありたいと強く願わされるところである。